巻12第8話 於薬師寺行万灯会語 第八
今は昔、薬師寺の万灯会は、その寺の僧、恵達がはじめて行いました。昼は本願薬師経を講じて法会を行います。そのとき、僧は法服を調え、それぞれの役をつとめます。音楽が鳴り響き、間断なく歌舞がおこなわれます。夜は万灯をともして飾られます。これらは寺僧が経営し、檀越(檀家)の寄付によってなりたっています。毎年三月二十三日におこなわれ、現在でも続いています。わが国の万灯会はここにはじまったのです(解説参照)。
恵達はやがて僧都になりました。生きている時には、みずからこの会を行いました。死ぬるときになって、同じ寺の弟子にゆずりました。恵達僧都は寺の西の山に葬られました。万灯会の夜は、その墓にかならず光があります。
心に染み入る、貴いことです。信あるなら、かならず結縁すべきと語り伝えられています。
【原文】
巻12第8話 於薬師寺行万灯会語 第八
今昔物語集 巻12第8話 於薬師寺行万灯会語 第八 今昔、薬師寺の万灯会は、其の寺の僧恵達が始め行たる也。昼は本願薬師経を講じて、一日の法会を行ふ。寺の僧、法服を調へて、皆色衆たり。音楽を宗として歌舞隙無し。夜は万灯を挑て、様々に飾
【翻訳】 柴崎陽子
【校正】 柴崎陽子・草野真一
【解説】 草野真一
万灯会は古くまで遡ることができ、ここに薬師寺が本邦初であると記されているのは誤りといわれている。
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