巻二十四第二十八話 菅原道真が夢で詩の読み方を教えてくれた話

巻二十四

巻24第28話 天神御製詩読示人夢給語 第廿八

今は昔、天神(菅原道真)がおつくりになった詩があります。

東行西行雲眇々
(とうこうさいこうくもびょうびょう)
二月三月日遅々
(にがつさんがつひちちたり)

この詩を後世の人は、もてはやして朗詠しますが、そのよみ方を知っている者はありませんでした。
ところが□□という人が北野天満宮(京都市上京区)の社前に参詣して、この詩を詠じたところ、その夜の夢に、気高く尊い方が現れて、
「そなた、この詩をどうよむか心得ているのか」
と、おっしゃいます。

北野天満宮 楼門

恐縮して、知らない旨お答えすると、

「『とさまに行きこうさまに行き、雲はるばる、きさらぎやよい、日うらうら

このようによむべきである」
と、お教えになりました。
夢がさめてのち、礼拝して退出しました。

天神は昔から、夢の中でかように詩をお教えになることが多かった、とこう語り伝えているということです。

【原文】

巻24第28話 天神御製詩読示人夢給語 第廿八
今昔物語集 巻24第28話 天神御製詩読示人夢給語 第廿八 今昔、天神の作らせ給ける詩有けり。   東行西行雲眇々   二月三月日遅々 と。此の詩を後代の人、翫て詠ずと云へども、其の読を心得る人無かりけるに、□□と云ふ人、北野

【翻訳】 柳瀬照美

【校正】 柳瀬照美・草野真一

【解説】 柳瀬照美

菅原道真(すがわらのみちざね・845-903)は、平安前期の学者。漢詩・漢文にすぐれ、宇多天皇に仕えて信任を受け、文章博士・蔵人頭・参議などを歴任し、醍醐天皇のとき、右大臣となった。
しかし、延喜元年(901)に左大臣・藤原時平の讒言によって太宰権帥に左遷された。配所で失意のうち他界した後、彼を排斥した人びとや保明親王・慶頼王と二人の皇太子が没し、清涼殿に落雷があるなど天変地異も相次いだため、これらは道真の怨霊の祟りと恐れられて北野天満宮に祀られた。

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【参考文献】
小学館 日本古典文学全集23『今昔物語集三』

【協力】株式会社TENTO・草野真一

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