巻9第25話 震旦隋代天女姜略好鷹感現報語 第廿五
今は昔、震旦の隋の時代、天水に姜略(きょうりゃく)という人がいました。
位は「鷹揚郎将(鷹をもちいた軍事教練を統括する役職)」であり、若いころから狩りを好み、鷹を放って鳥を捕らえることを常の遊びとしていました。
ところがあるとき、姜略は重い病気にかかり、たいへんな苦しみと痛みに襲われました。
病の床に伏しているとき、夢のような幻を見ました。
そこには、たくさんの鳥が現れたのです。その数、およそ千羽ほど。
どの鳥もみな首がなく、血を流したまま、姜略の寝ている床のまわりをぐるりと取り囲み、声をそろえて鳴きながら言いました。
「われらの首を返せ、返せ!」
そのとき、姜略は激しい頭痛に襲われ、たまらず気を失ってしまいました。
やがて意識を取り戻したとき、語りました。
「首のない鳥たちが『われらに首を返してくれ』と訴えた。
しかし、私は返すことができなかった。『代わりに、あなたたちのためにこれから善い行い(追善供養)をします』と約束した。
すると、鳥たちはその言葉を聞いて許して去っていき、そのあと病がすっかり治まったのだ」
それからというもの、姜略は鳥たちのために心を尽くして善行を修め、殺生(生物を殺すこと)をやめました。
また、生涯にわたって酒や肉を断ち、命あるものを殺さず、常に善根を修しました。
そう語り伝えられています。
【原文】
巻9第25話 震旦隋代天女姜略好鷹感現報語 第廿五
今昔物語集 巻9第25話 震旦隋代天女姜略好鷹感現報語 第廿五 今昔、震旦の隋の代に、鷹揚郎将として、天女の姜略と云ふ人有けり。若くして田猟を好むで、吉く鷹を放つを以て常の遊びとす。
【翻訳】 西村由紀子
【校正】 西村由紀子・草野真一

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