巻三十一

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巻三十一第十話 愛人と寝ているところに妻が押しかけてきた話

巻31第10話 尾張国匂経方妻事夢見語 第十 今は昔、尾張国(愛知県)に匂の経方という者がありました。通称を匂官首といいました。生活に不自由のない者でした。 経方は長年つれそっている本妻のほかに、慕っている女がありました。本妻は、それが...
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巻三十一第九話 同じ淫夢を見た夫婦の話

巻31第9話 常澄安永於不破関夢見在京妻語 第九 今は昔、常澄安永という人がありました。惟孝親王の下家司(しもけいし、家務を司る下級の者)です。安永は親王の封戸(税)を徴収するため、上野の国(群馬県)に入りました。何か月か経って帰国の際、...
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巻三十一第八話 炎にすがたを映して死んだ女の話

巻31第8話 移灯火影死女語 第八 今は昔、女御(身分の高い女性)のもとに勤めている若い女房がありました。小中将の君と呼ばれていました。すがたもありさまもとても美麗で、心ばえも悪くありませんでしたから、同僚の女房たちも、みな小中将を親しく...
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巻三十一第七話 昔の女の霊に会って命を落とした話

巻31第7話 右少弁師家朝臣値女死語 第七 今は昔、右少弁・藤原師家という人がありました。たがいに心を通わせて、行き通う女がありました。 女の心ばえはとてもよく、つらいことも耐え忍び、静かに思いをめぐらす性格でしたから、弁は事にふれ「こ...
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巻三十一第六話 立て札で人を避けた翁の話

巻31第6話 賀茂祭日一条大路立札見物翁語 第六 今は昔、賀茂の祭の日、一条大路と東洞院大路が交わる場所に、早朝より札が立てられました。札にはこう書かれていました。 「ここは翁が祭を見るところである。立ち入ってはならない」 人はその札...
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巻三十一第五話 娘を宮様のように飾った身分の賤しい男の話

巻31第5話 大蔵史生宗岡高助傅娘語 第五 今は昔、大蔵省の最下級の史生(書記)に、宗岡高助という者がありました。出かけるときには垂髪(手入れしてない髪)で、栗毛の貧弱な馬を乗り物にしていました。袴・袙・襪(足袋)なども粗末なものでした。...
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巻三十一第四話 幽閉された絵師が描いた地獄の絵の話

巻31第4話 絵師巨勢広高出家還俗語 第四 今は昔、一条の院の御代に、巨勢広高という絵師がありました。腕は古の人に劣らず、今も肩を並べる者はありません。 もとより広高は道心ある人でしたが、重い病を受けてわずらって、世の中をつまらないもの...
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巻三十一第三話 淫行の罪を犯さないために少女を殺した僧の話

巻31第3話 湛慶阿闍梨還俗為高向公輔語 第三 今は昔、湛慶阿闍梨という僧がありました。慈覚大師(円仁)の弟子です。真言を極め、内外(日本と中国)の文道に通じていました。また、幾多の芸に優れていました。 湛慶は(真言の)行法を修め、公私...
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巻三十一第二話 橋をかけるため寄進を集めた話

巻31第2話 鳥羽郷聖人等造大橋供養語 第二 今は昔、鳥羽の村(京都市南区上鳥羽)に大きな橋がありました。古くから桂川にかかっている橋です。その橋が壊れて、人は渡ることができませんでした。 人がみな河を泳いで渡っていることを歎き、一人の...
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巻三十一第一話 破壊された尼の宮の話

巻31第1話 東山科藤尾寺尼奉遷八幡新宮語 第一 今は昔、天暦(元号。947-957)の御代に、粟田山の東、山科の郷の北の方に寺がありました。藤尾寺といいます。その寺の南に別の堂があり、その堂に一人の年老いた尼が住んでいました。尼はゆたか...
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巻三十一第三十三話 空に去っていった娘の話(かぐや姫の物語)

巻31第33話 竹取翁見付女児養語 第卅三 今は昔、ひとりのおじいさんがおりました。竹を取って籠をつくり、それを売って生活していました。 おじいさんがいつものように籠をつくろうと竹の林に入っていくと、光る竹がありました。竹の節の中には、三寸...
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巻三十一第三十一話 太刀帯の詰め所で魚を売っていた老婆の話(芥川龍之介『羅生門』元話)

巻31第31話 太刀帯陣売魚嫗語 第卅一 今は昔、三条天皇が皇太子でいらっしゃる時に、太刀帯(たちはき・皇太子を護衛する役職)の詰め所にいつも訪れて、魚を売る女がいました。 太刀帯たちが、女の売っていた魚を買って食べると、味が美味し...
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