巻二十(全)

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巻二十第三十一話 母を責めて狂気に死んだ男の話

巻20第31話 大和国人為母依不孝得現報語 第卅一 今は昔、大和国添の上の郡(奈良県奈良市)に住む人がありました。字を瞻保(みやす)と言いました。朝廷につかえる学生(官僚候補生)でした。明け暮れ書物を学んでいましたが、心に智はありませんで...
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巻二十第三十話 現世で地獄の炎に焼かれた男の話

巻20第30話 和泉国人焼食鳥卵得現報語 第三十 今は昔、和泉の国和泉の郡の痛脚村(大阪府泉大津市)に一人の男がありました。よこしまな心を持ち、因果を知らず、常に鳥の卵を煮焼して食べていました。天平勝宝六年(754年)三月、この男の家に見...
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巻二十第二十九話 両眼をなくした馬殺しの男の話

巻20第29話 河内国人殺馬得現報語 第廿九 今は昔、河内の国(大阪府)□郡に住む人がありました。名を石別といいます。瓜をつくり、これを売って生計を立てていました。 ある日、馬に瓜を負わせて売りに行こうとして、馬が負う力よりずっと多く、こ...
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巻二十第二十八話 兎を捕らえ皮をはぎ殺した男の話

巻20第28話 大和国人捕菟感現報語 第廿八 今は昔、大和国(奈良県)□郡に住む人がありました。荒々しい心をもち、あわれみの心はありませんでした。好んで昼夜に生命を殺し、それを仕事にしていました。 あるとき、この人は野で兎をとらえて、生き...
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巻二十第二十七話 長屋王の怨霊の話

巻20第27話 長屋親王罸沙弥感現報語 第廿七 今は昔、天平元年(神亀六年)二月八日(西暦729年)、聖武天皇は元興寺において大きな法会をひらき、三宝(仏法僧)を供養しました。太政大臣(実際は左大臣)の長屋の親王という人が勅を受け、諸僧を...
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巻二十第二十六話 乞食僧を打って圧死した男の話

巻20第26話 白髪部猪麿打破乞食鉢感現報語 第廿六 今は昔、備中の国小田の郡(岡山県笠岡市)に、白髪部の猪麿という人がありました。よこしまな心をもち、三宝(仏法僧)を信ぜず、また、人にものを与えることをとてもいやがっていました。 ある日...
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巻二十第二十五話 乞食を打って報いを受けた人の話

巻20第25話 古京人打乞食感現報語 第廿五 今は昔、奈良に都があった時代、一人の人がありました。愚かな心をもち、因果(仏の教え)をまったく信じませんでした。 ある日、乞食の僧がやってきて、その人の居室に至りました。その人は乞食を見ておお...
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巻二十第二十四話 銭を惜しんで毒蛇になった僧の話

巻20第24話 奈良馬庭山寺僧依邪見受蛇身語 第廿四 今は昔、奈良に馬庭山寺という寺がありました。その山寺に、一人の僧が住んでいました。長くその寺でねんごろに勤め行っておりましたが、智りは得られず、邪見の心が深く、物を惜しんで人に与えるこ...
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巻二十第二十三話 極楽に生まれようとして小蛇になった聖人の話

巻20第23話 比叡山横川僧受小蛇身語 第廿三 今は昔、比叡山の横川に僧がありました。道心をおこし、ひたすらに阿弥陀の念仏を唱え、「極楽に生まれさせてください」と願っていました。法文もよく知っていましたが、ただ極楽に生まれることを...
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巻二十第二十二話 寺に住み着いた牛が夢で語った話

巻20第22話 紀伊国名草郡人造悪業受牛身語 第廿二 今は昔、紀伊国の名草の郡三上の村(和歌山県和歌山市)に、寺を建造し、薬王寺と名づけました。寄進を求めて多くの医薬を購入し、寺に置いて、人々にほどこしました。 聖武天皇の御代に、薬の材料...
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巻二十第二十一話 罪のために牛として生まれた男の話

巻20第21話 武蔵国大伴赤麿依悪業受牛身語 第廿一 今は昔、武蔵の国多摩の郡(東京都心・都下)の大領(郡司の最高位)に、大伴の赤麿という人がありました。天平勝宝元年(西暦749年)の十二月十九日に、亡くなりました。 翌年五月七日、その家...
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巻二十第二十話 牛となって生前の借りをかえした話

巻20第20話 延興寺僧恵勝依悪業受牛身語 第二十 今は昔、延興寺という寺がありました。その寺に、恵勝という僧がおりました。長く寺に住む間に、寺の風呂に使う薪一束を人に与えたことがありました。その後、恵勝はこれを償うことなく亡くなりました...
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巻二十第十九話 地獄の鬼に賄賂をおくった話

巻20第19話 橘磐島賂使不至冥途語 第十九 今は昔、橘の磐島という者がありました。聖武天皇の御代、奈良の都の人でした。大安寺の西の郷に住んでいました。 大安寺の修多羅供(しゅたらく、寺院運営の基金)の銭四十貫を借り、越前の国(福井県)敦...
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巻二十第十八話 別人の身体に宿って生き返った女の話

巻20第18話 讃岐国女行冥途其魂還付他身語 第十八 今は昔、讃岐の国山田の郡(香川県高松市)に女がいました。姓は布敷の氏です。この女は身に重い病を得ました。多くのめずらしい食物を門の左右に祭り、疫神(疫病神、災いをもたらす)を饗応しまし...
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巻二十第十七話 施しをせず牡蠣を救った人の死後の話

巻20第17話 讃岐国人行冥途還来語 第十七 今は昔、讃岐国香水(かがわ)の郡坂田の郷(香川県高松市)に、一人の富人がありました。姓は綾の氏です。妻も同姓でした。 その隣に年老たる嫗(おうな、老婆)が二人ありました。ともに寡(やもめ)であ...
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