巻二十九

巻二十九第十四話 闇に響く女の泣き声の話

巻29第14話 九条堀河住女殺夫哭語 第十四 今は昔、延喜(えんぎ:醍醐天皇)の御代のこと、天皇が夜、清涼殿※1の御寝所においでになられました時のことでございます。にわかに蔵人※2をお召しになられたので、蔵人が一人参上したところ、天皇が、...
巻二十九

巻二十九第十三話 妻による夫殺害が露見した話

巻29第13話 民部大夫則助家来盗人告殺害人語 第十三 今は昔、民部の大夫(みんぶのだいふ)※1□□(欠字。姓不明)の則助という者がいました。ある日、終日外出していて夕方に家に帰ってきたところ、車宿(くるまやどり)※2の片隅から一人の男が...
巻二十九

巻二十九第十二話 盗賊の密談を聞き家財道具を預けた話

巻29第12話 筑後前司源忠理家入盗人語 第十二 今は昔、大和の守(やまとのかみ)藤原親任(ふじわらのちかとう)という人がいました。その人の舅に筑後の前司(ちくごのぜんじ)源忠理(みなもとのただまさ)という人がいました。賢くて万事に通じ、...
巻二十九

巻二十九第十一話 瓜を盗み食いした子を勘当した話

巻29第11話 幼児盗瓜蒙父不孝語 第十一 今は昔、□□(姓名欠字)という者がいました。ある夏の頃、良い瓜を手に入れましたので、「これは珍しいものだから、夕方帰ってきてから贈り物にしよう」と言って、十個ばかりを厨子(ずし)※1にしまって、...
巻二十九

巻二十九第十話 伯耆の国府の蔵に入った盗人が殺される話

巻29第10話 伯耆国府蔵入盗人被殺語 第十 今は昔、伯耆守(ほうきのかみ・現在の鳥取県中西部の国司)橘経国(たちばなのつねくに)という人がいました。この人が伯耆守であった当時、世の中がひどい凶作で、まったく食べる物のない年がありました。...
巻六(全)

巻六第十話 真言を伝えるため震旦から天竺に戻りふたたび震旦に入った僧の話

巻6第10話 仏陀波利尊勝真言渡震旦語 第十 今は昔、北天竺の罽賓国(かひんこく、カブール。カシミール説もあり)に、仏陀波利(ぶっだはり)という聖人がありました。唐では覚護と呼ばれました。心を発して道を求めた人です。 文殊が清涼山(五台山...
巻十一(全)

巻十一第三話 役行者が鬼神をつかって山に橋をかけた話

巻11第3話 役優婆塞誦持呪駈鬼神語 第三 今は昔、役(えん)の優婆塞(うばそく、在家信者)という聖人がありました。大和国葛上の郡茅原の村(奈良県御所市)の人です。俗姓は賀茂、役の氏でした。年来、葛木の山に住み、藤の皮を以て衣とし、松の葉を...
巻三

巻三第二話 文殊が人間界に生まれた話

巻3第2話 文殊生給人界語 第二  今は昔、文殊という方は、中天竺は舎衛国(コーサラ国、祇園精舎がある)の多羅村にいる梵徳婆羅門という人の子でした。母の右脇からお生まれになり、お生まれになったときにはその家も門も蓮華につつまれました。お体...
巻二十九

巻二十九第九話 殺した法師の家をたずねた盗人の話

巻29第9話 阿弥陀聖殺人宿其家被殺語 第九 今は昔、□□の国□□の郡に□□寺という寺がありました。その寺に、阿弥陀の聖ということをして諸国を歩く法師がいました。上に鹿の角を付け、末端には二股の金具を付けた杖※1を突き、鉦(かね)を叩いて...
巻二十六

巻二十六第五話① 陸奥国の兄弟(埋められた児の話①)

巻26第5話 陸奥国府官大夫介子語 第五 今は昔、陸奥の国(東北地方太平洋岸)に、権勢も財力もある兄弟がありました。兄は弟よりどんなことでも勝っていました。国の介(長)をつとめ、政務をおこなっていたので、国の庁(国府)に常にあらねばならず...
巻十一(全)

巻十一第二話② 行基をののしった智光の話

(①より続く) 巻11第2話 行基菩薩学仏法導人語 第二 過去世において、行基菩薩は和泉国大鳥の郡(大阪府堺市)に住む人の娘でした。幼いころ、祖父母にいつくしまれていました。その家に仕えている下童がありました。庭の糞をかたづけ、棄てること...
巻十一(全)

巻十一第二話① 仏教を禁じた朝廷と行基の話

巻11第2話 行基菩薩学仏法導人語 第二 今は昔、大日本国に行基菩薩という聖がありました。和泉の国の大鳥(大阪府堺市)の人です。誕生したとき物につつまれて生れたので、父はこれを忌み、木の枝に乗せておいたのですが、生まれたときから言葉を...
巻六(全)

巻六第九話 不空三蔵が武神を呼び唐の玄宗皇帝を助けた話

巻6第9話 不空三蔵誦仁王呪現験語 第九 今は昔、不空三蔵は南天竺の人です。幼少の折、金剛智に随って、天竺から震旦に渡り、震旦で出家し、金剛智に瑜伽無上秘密の教(密教)を受け、世に弘め、衆生を利益しました。ときの震旦の国王、唐の玄宗皇...
巻二(全)

巻二第十五話 須達の美しい娘が十の卵を産んだ話

巻2第15話 須達長者蘇曼女十卵語 第十五 今は昔、天竺の舎衛城(コーサラ国の首都、祇園精舎がある)の中に(インドでは城の中に街がある)、一人の長者がありました。須達(しゅだつ、スダッタ。祇園精舎をつくった人)といいます。彼のたくさんの子...
巻二十九

巻二十九第八話 冷たい川に落ち犬に食われた女の話

巻29第8話 下野守為元家入強盗語 第八 今は昔、下野(しもつけ)の守藤原為元※1という人がいました。家は三条大路よりは南、西洞院大路よりは西に当たる所にありました。 さて、十二月のつごもりの頃に、その家に強盗が入りました。隣家の人々が驚...
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