巻一(全)

巻一第三十三話 糸で仏を供養した貧しい女の話

巻1第33話 貧女仏供養糸語 第卅三 今は昔、天竺に貧しい女がありました。人に使役される仕事に就いており、朝出かけて暮に帰る、そのくりかえしでした。 仏はそのそばに住んでいました。女は暮に家に帰るたびに、糸を一本の枝にかけ、これを仏への...
巻四(全)

巻四第二十四話 龍樹、透明人間になって犯しまくった話(芥川龍之介『青年と死』元話)

巻4第24話 龍樹俗時作隠形薬語 第廿四 今は昔、龍樹菩薩という聖人がありました。智恵は無量、慈悲は広大な方です。俗に在ったときは、外道(仏教以外の教)の典籍を学んでいました。そのころ、二人と示し合わせて穏形の(透明人間になる)薬をつくり...
巻十七(全)

巻十七第十二話 地蔵の夢を見た話

巻17第12話 改綵色地蔵人得夢告語 第十二 今は昔、阿弥陀仏を造るついでに、古い地蔵菩薩像を改めて彩色して、正法寺という寺に安置しました。この地蔵は、もともと三井寺の塔の中にあったもので、手と蓮花座(ハスの花の形をした台座)がありません...
巻二十四

巻二十四第十七話 賀茂保憲と安倍清明、覆物を占う(欠話)

巻24第17話 保憲清明共占覆物語 【解説】柳瀬照美 本話は表題のみの本文欠話。初めから欠脱していたか、とも思われる。 陰陽道の天才、賀茂保憲と安倍清明の術くらべ。表題より、覆い隠された物を当てる試合のようであったと推察される。 陰...
巻二十(全)

巻二十第十三話 普賢菩薩を射殺した猟師の話

巻20第13話 愛宕護山聖人被謀野猪語 第十三 今は昔、愛宕護(あたご)の山に久しく祈り続ける持経者の聖人がありました。法華経を受持し、他念なく祈り、坊の外に出ることはありませんでした。智恵を持たず、法文を知りませんでした。 山の西の方...
巻一(全)

巻一第三十二話 最後の衣を布施した物乞い夫婦の話

巻1第32話 舎衛国勝義依施得富貴語 第卅二 今は昔、天竺の舎衛国(しゃえいこく、コーサラ国)には九億の家がありました。その中に勝義という人が住んでいました。とても貧しく、塵ほどの貯えもありませんでした。夫妻そろって国内の九億の家をたずねて...
巻二十七(全)

巻二十七第五話 水の精が人になって捕らえられた話

巻27第5話 冷泉院水精成人形被捕語 第五 今は昔、陽成院がおいでになられた所は、二条大路の西桐院大路の西、大炊御門大路の南、油小路の東にある二町でした。院がおかくれになられた後は、その冷泉小路を開いて、北の町は人家になって、南の町に池が...
巻一(全)

巻一第三十一話 祇園精舎をつくった話

巻1第31話 須達長者造祇薗精舎語 第卅一 今は昔、天竺の舎衛国(しゃえこく、コーサラ国)に一人の長者(富裕な人)がおりました。名を須達(すだつ、スダッタ)といいます。彼は一生の間に、七度富貴を体験し、七度貧窮に苦しみました。七度目の貧は、...
巻五(全)

巻五第十六話 果物を好む王が仏法を探し求めた話

巻5第16話 天竺国王好美菓又与美菓語 第十六 今は昔、天竺に国王がありました。常に美菓(美味な果物)を好み、楽しんでいました。 ある日、王宮を守る者(宮守)が池のほとりでおいしそうな果物を見つけました。 「国王が好むものだ」 彼は...
巻二十(全)

巻二十第十二話 仏に導かれ狂死した僧の話

巻20第12話 伊吹山三修禅師得天狗迎語 第十二 今は昔、美濃の国(岐阜県)の伊吹山に、久しく修行する聖人がありました。智恵にめぐまれず、法文を学びませんでした。ただ、弥陀の念仏(南無阿弥陀仏)を唱える以外のことを知りませんでした。名を三...
巻四(全)

巻四第二十三話 父を殺し母を妻とした話

巻4第23話 天竺大天事語 第廿三 今は昔、仏が涅槃に入って四百年たったころ、天竺の末度羅国(まとらこく、マトゥラー)に、大天(摩訶提婆、マハーデーヴァ)という人がありました。その父は商いのために大海に出て、他国へ行きました。 大天は思...
巻十七(全)

巻十七第十一話 僧を軽んじた神主の話

巻17第11話 駿河国富士神主帰依地蔵語 第十一 今は昔、駿河の国富士の宮(浅間神社)に神主がありました。和気光時(わけのみつとき)といいました。妻とともに、深く地蔵菩薩を信仰していました。しかし、光時は神主だったので、僧と出会っても馬を...
巻一(全)

巻一第三十話 蟻を救うため命を捨てた帝釈天の話

巻1第30話 帝釈与修羅合戦語 第三十 今は昔、帝釈天(インドラ)の妻は、舎脂夫人(しゃしふじん、シャチー)といい、羅睺阿修羅王(らごあしゅらおう)の娘でした。父の阿修羅王は舎脂夫人を取り戻すため、常に帝釈と戦っていました。 ...
巻一(全)

巻一第二十九話 戦争と王になった富豪の話

巻1第29話 波斯匿王阿闍世王合戦語 第廿九 今は昔、天竺に二つの国がありました。舎衛国(しゃえこく、コーサラ国)と摩竭提国(まかたこく、マガダ国)です。舎衛国の王を波斯匿王(はしのくおう、プラセーナジット王)といい、摩竭提国の王を阿闍世王...
巻一(全)

巻一第二十八話 その気がないのに出家した酔っぱらいの話

巻1第28話 婆羅門依酔不意出家語 第廿八 今は昔、天竺に一人の婆羅門(バラモン、最上カーストである僧侶階級)がありました。酒に酔い、仏のいらっしゃる祇園精舎に行きました。酔っているため、本心を忘れ、思ってもいないことをしてしまいました。 ...
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