巻十第三十七話 市で粥を配り続けた老婆の話

第十

巻10第37話 長安市汲粥施人嫗語 第卅七

今は昔、震旦の長安の市で、粥をたくさん作って市の人たちに食べさせてくれる老婆がいました。

この市に行き交う人は数知れず、また、日の出から日の入りまで市の門を出入りする人が絶えないのですが、市の門の近くで粥をたくさん準備して、百も千もの器を並べて、その器に粥をよそって人々に食べさせるという功徳を行っていました。

さて、始めの頃はその粥を柄杓(ひしゃく)で汲んで、丁寧に器に入れていましたが、年月を経るうちに熟練して、一、二丈(約3〜6メートル)離れたところから柄杓に汲んだ粥を器に投げ入れても一滴も零さなくなりました。

更に年月を経て年期を得ると、四、五丈(約12〜15メートル)離れたところから柄杓の粥を器に投げ入れても一滴もこぼさなくなりました。この様子を見ていた人たちは、「やはり、何事と言えども、長年練達すればこのようになるものだ」と言い合ったと、語り伝えられています。

長安(現在の西安)

【原文】

巻10第37話 長安市汲粥施人嫗語 第卅七
今昔物語集 巻10第37話 長安市汲粥施人嫗語 第卅七 今昔、震旦の長安の市に、粥を多く煮て、市の人に食はしむる嫗有けり。 此の市に行き違ふ人の、員知らず、日の出づる時より、日の入る時に至るまで、市門を出入するに、市門の前に、粥を多く煮儲て、百千の器を並べ置て、其の粥を其の器に盛て、人に食はしむる功徳を造けり。

【翻訳】 昔日香

【校正】 昔日香・草野真一

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第十
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今昔物語集 現代語訳

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