巻十九

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巻十九第十三話 雪の歌を詠み出家した男の話

巻19第13話 越前守藤原孝忠侍出家語 第十三 今は昔、越前(福井県北部)の守・藤原孝忠という人がありました。任国にあるころ、とても貧しい侍で、昼夜をおかず熱心に勤める者がありました。冬であっても、帷(かたびら、夏の衣服)だけを着ていまし...
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巻十九第十二話 余命いくばくもない老人が仏となる話

巻19第12話 於鎮西武蔵寺翁出家語 第十二 今は昔、仏道を修行するため、諸国を旅する僧がありました。鎮西(九州)を流浪しているとき、□国の□坂という所に、道祖神(さいのかみ)がありました。僧はその道祖神の祠のあたりで宿をとりました(野宿...
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巻十九第十一話 観音と呼ばれ出家した狩人の話

巻19第11話 信濃国王藤観音出家語 第十一 今は昔、信乃国(信濃国、長野県)に、筑摩の湯という湯がありました。人々はこれを薬湯と呼び、訪れては(治癒のために)浴びていきました。 あるとき、その里の人が夢を見ました。夢に人があらわれ、告...
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巻十九第十話 腐乱した妻の遺体と出家した夫の話

巻19第10話 春宮蔵人宗正出家語 第十 今は昔、□天皇が春宮(とうぐう、皇太子)でいらっしゃるときに、蔵人(くろうど、秘書)として、宗正という者が仕えていました。若く美しく、まっすぐな心を持っていたので、春宮は親愛の情を抱き、なにかにつ...
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巻十九第九話② 若君の死(出家した侍②)

(①より続く) 巻19第9話 依小児破硯侍出家語 第九 若君が乳母の家に行き着いて見ると、とても荒れた狭い小宅でした。感じたことのない心地で、おそろしく心細くすごしました。夕暮れ、若君は心苦しげな様子で、独り言に詠みました。 こころか...
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巻十九第九話① 追い出された若君(出家した侍①)

巻19第9話 依小児破硯侍出家語 第九 今は昔、村上天皇の御代、小一条院の左大臣という人がありました。名を師尹(藤原師尹)といいます。貞信公(藤原忠平)という関白の五男でした。深く愛し大事にしている娘が一人ありました。姿は美しく、心のきれ...
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巻十九第三十二話 平維叙、神に恩返しをされる

今は昔、陸奥守(むつのかみ・現在の東北地方の国司)平維叙(たいらのこれのぶ)という者がいました。貞盛朝臣(さだもりのあそん・平将門を誅殺した勲功者)の子であります。任国にはじめて下り、神拝(じんぱい・新任国司の行事)ということをしようと、...
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巻十九第二十七話 児よりも母を助けた話

巻19第27話 住河辺僧値洪水棄子助母語 第廿七 今は昔、高潮が上がって、淀川の水かさが増し、河辺の多くの人の家が流れました時に、年のほど五、六歳くらいで、色白く見た目も端正な、気配りもしっかりできる男の子をもって、片時も身も離さず可愛が...
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巻十九第二十六話 下野公助、父に打たれても逃げなかった話

巻19第26話 下野公助為父敦行被打不逃語 第廿六 今は昔、右近の馬場で手番(てつがい・射手を左右に分けて二人一組で勝負を競う。五月の節句の宮中行事)が行われたとき、中将・大将たちが馬場で着座していました。その日、下野公助(しもつけの...
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巻十九第二十四話 安倍清明、泰山府君の祭祀を行う

巻19第24話 代師入太山府君祭都状僧語 今は昔、□□という人がいました。 □□の僧であります。 なかなかの名僧なので、皇室・一般から共に尊ばれていましたが、重い病気にかかり、悩み患っているうち、日に日に病が重篤になったので、師のもと...
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巻十九第十五話 公任の大納言、出家して長谷に住む(欠話)

巻19第15話 公任大納言出家籠居長谷語 第十五 【解説】 柳瀬照美 本話は表題だけ留める本文欠話。当初よりの欠脱かと思われる。 藤原公任(ふじわらのきんとう)は、漢詩・管弦・有職に長じた歌人。藤原道長に対して才能を誇示した『三舟の...
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巻十九第十四話 人殺しの悪人が僧になって旅する話(マンガリンクあり)

巻19第14話 讃岐国多度郡五位聞法即出家語 第十四 今は昔、讃岐国多度の郡(香川県善通寺市)に、源大夫という人がありました。名はわかりません。とても猛々しい人で、殺生を生業としていました。日夜朝暮に山野に行っては鹿鳥を狩り、川海に行って...
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巻十九第八話 キジになって鷹と犬に追われた男の話

巻19第8話 西京鷹仕者見夢出家語 第八 今は昔、西京に鷹狩りを仕事にしている者がありました。息子が何人もいて、その子たちにも鷹狩りを仕事にするように伝え教えていました。 常に心にかけ、夜となく昼となく好んだことでしたから、寝ても覚めて...
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巻十九第七話 母の生まれ変わりの鹿を射殺してしまった男の話

巻19第7話 丹後守保昌朝臣郎等射母成鹿出家語 第七 今は昔、藤原の保昌という人がありました。武家ではありませんでしたが、勇猛な心を持ち、弓箭の道に通じていました。丹後(京都府宮津市など)の守として任についている間、朝暮に郎等(家来)や眷...
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巻十九第六話 死んだ鴨の雄を慕って追ってきた雌鴨の話

巻19第6話 鴨雌見雄死所来出家語 第六 今は昔、京に一人の生侍(身分の低い若い侍)がありました。いつごろのことかはわかりません。家はとても貧しく、生きていくことすら苦しいありさまでした。 あるとき、妻がお産して、肉食をして体力をつけるこ...
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