巻10第27話 震旦三人兄弟売家見荊枯返直返住語 第廿七
今は昔、震旦の□の時代に、三人の兄弟がありました。長男は田達といい、次男は田旬といい、三男を田烟といいました。両親の亡くなった後、三人は同じ一つの家に住み、日々を暮らしていました。その家には紫の荊(むばら、イバラ)があり、四季折々に花を咲かせ、言いようもない美しさでした。このような類まれなるものはないと、この荊を見る人はみな感心していました。
ところが、何があったのか分かりませんが、この兄弟が相談をして同意し、「さあ、私達はこの家を売って、その金を三つに分け、それぞれの分け前を取って、ここから出ていくとしよう」と言い出しました。そしてすぐに家を売って、売価を三つに分け、それぞれが取り分を得て立ち去ろうとしました。
家の荊も翌朝には三つに分けて掘り起こし、それぞれが持っていこうとしていましたが、その夜のうちに荊はなくなってしまいました。翌朝見ると、荊は影も形もありませんでした。
そこで三人は再び相談し、このように語り合いました。「荊は人が持ち去った訳でもないのに消えてしまった。きっと我々がここを立ち去ろうとしたからだろう。草木でさえ別離を惜しむということだ。人であれば惜しむ心は尚更強いことに違いない。我々はここを立ち去るのはやめることにしよう」そして家の売値を直ちに返して、三人は元のように同じ屋根の下で暮らすことにしました。すると、荊はまた元のように生えてきました。
草木も昔は人との別れをこのように惜しんだのだと、語り伝えられています。
【原文】
巻10第27話 震旦三人兄弟売家見荊枯返直返住語 第廿七
今昔物語集 巻10第27話 震旦三人兄弟売家見荊枯返直返住語 第廿七 今昔、震旦の□□代に、兄弟三人有けり。兄をば田達と云ひ、次をば田旬と云ひ、次をば田烟と云ひけり。父母、死にて後、三人共に一家に住して、世を過す。其の家に、紫の荊(むばら)有り。四時に花栄(さき)て、面白き事限無し。然れば、世に希れなる物と云て、見...
【翻訳】 昔日香
【校正】 昔日香・草野真一

巻七第二十六話 死んだ妻に出会った人の話
巻7第26話 震旦魏州刺史崔彦武知前生持法花語 第廿六 今は昔、震旦の隋の開皇の代(581年~600年)に、魏州の刺史(地方官)で、博陵郡の、崔の彦武という人がいました。 担当地域の見回りをしているとき、ある里に着くと、彦武は突然驚喜し...








コメント