巻十二第十八話 火災にあっても燃えなかった絵像の話

巻十二

巻12第18話 河内国八多寺仏不焼火語 第十八

今は昔、河内の国石川の郡(大阪府南河内郡)に、八多寺という寺がありました。寺には阿弥陀如来の絵像がありました。

その郷の古老が語りました。
「昔、この寺のそばに女人が住んでいた。夫が死んだ日、仏の像の絵を奉ろうとした。しかし、女は寡婦で貧しく、この願を遂げずに年月が過ぎていった。ある秋、女はみずから田に出て穂を摘み、絵師を請じて仏の像を描かせ、供養しようとした。絵師もこれに心を動かされ、願主の女人とともに心を発し、仏を描いて供養した。

八多寺の金堂に安置し、『常に恭敬礼拝しよう』と考えていたが、盗人があって、寺に火を放ち堂を焼いてしまった。寺には何も残らなかったが、燃えさかる炎の中にこの絵像があった。人が奇異に思って寄って見ると、絵像はいささかも損じていなかった。寺の周辺の人はこれを見て、かぎりなく貴んだ。

これは女人が心を発して絵を奉ったので、仏が霊験を施し給うたのだ。女は貧しかったが、秋になって田に出て、みずから穂を拾い願を遂げたことは、とてもありがたいことである。仏もその志を哀れみ、このような霊験を施してくれたのだろう。功徳はたとえすくなくとも、信に依るべきである」

古老の話を語り伝えています。

【原文】

巻12第18話 河内国八多寺仏不焼火語 第十八
今昔物語集 巻12第18話 河内国八多寺仏不焼火語 第十八 今昔、河内の国石川の郡に、八多□と云ふ寺有けり。其の寺に阿弥陀の絵像□□在ます。 其の郷の古老の人、語て云く、「昔し、此の寺の側に、一人の女人有けり。其の女の夫死ぬる日、此の仏の像を書き奉らむと為る間、此の女、寡にして身貧きに依て、此の願を遂げずして年月...

【翻訳】 柴崎陽子

【校正】 柴崎陽子・草野真一

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今昔物語集 現代語訳

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