巻十九第三十八話 大風で比叡山の大鐘が落ちた話

巻十九

巻19第38話 比叡山大鐘為風被吹辷語 第卅八

今は昔、比叡山の東塔(エリアの名)に、大鐘がありました。鐘の周囲は八尺(約2.4メートル)ほどもありました。

永祚(えいそ)元年(989年)己丑 (つちのとうし)八月十三日、大風が吹いて、堂舎宝塔・門々戸々を吹き倒し、この大鐘も吹かれ落ちて、南の谷に転がり落ちました。最初の房は棟・板敷を打ちやぶり、谷にそって転がり、同じように打ち抜いて、七つの房を打ち倒し、南の谷底に落ちました。

夜半ごろの事ですから、僧房共には多くの人が寝入っていました。しかし、誰もが無事でした。まったく希有のことです。

比叡山の三宝(仏法僧)の加護がなければ、房々の人は生きていません。貴び礼したと語り伝えられています。

比叡山延暦寺東塔 鐘楼

【原文】

巻19第38話 比叡山大鐘為風被吹辷語 第卅八
今昔物語集 巻19第38話 比叡山大鐘為風被吹辷語 第卅八 今昔、比叡の山の東塔に、大鐘有けり。高さ八尺廻り也。 而る間、永祚元年己丑八月の十三日、大風吹て、所々の堂舎宝塔・門々戸々を吹倒しけるに、此の大鐘を吹辷(ふきまろ)ばして、南の谷に吹落してけり。最初の房の棟・板敷を打切て、谷様に辷て、次々の房共同じく打抜...

【翻訳】 草野真一

【解説】 草野真一

この大風は複数の書物に記録されている。今昔物語集も本話だけでなく、薬師寺の事例(巻十二第二十話)を伝えている。朱雀門をはじめ宮中の諸建築物も倒壊、鴨川も氾濫し、畿内全域が被害に見舞われた。
本話では永祚元年のできごととして語られているが、永祚は元年しか存在しない。翌年には改元されたからだ。明治以前は天変地異などが起こるたび改元がおこなわれていたが、変えたばかりの元号をあらためざるを得ないほど規模の大きな災害だったことがわかる。

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巻十九
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今昔物語集 現代語訳

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