巻三十一巻三十一第十九話 つかないのに鳴る不思議な鐘の話 巻31第19話 愛宕寺鋳鐘語 第十九 今は昔、小野篁(おののたかむら)という人が愛宕寺(おたぎでら、六道珍皇寺)を建立し、その寺で使うために鋳物師に鐘を鋳させたところ、鋳物師が言うには、 「この鐘は撞(つ)く人がなくても、十二の時(今の... 2025.06.14巻三十一
巻三十一巻三十一第十八話 越後国に小人が漂着した話 巻31第18話 越後国被打寄小船語 第十八 今は昔、源行任朝臣(みなもとのゆきとうのあそん)という人が越後守(えちごのかみ・新潟県の国司)としてその国に在任中、□□郡の浜に小さな船が打ち寄せられました。 幅二尺五寸(約76㎝)、深さ二寸... 2025.05.22巻三十一
巻三十一巻三十一第十七話 流れ着いた巨人の死体の話 巻31第17話 常陸国□□郡寄大死人語 今は昔、藤原信通朝臣(ふじわらののぶみちのあそん)という人が常陸守(ひたちのかみ・茨木県北東部の国司)として、その国に在任中のこと、任期が終わるという年の四月頃、風がものすごく吹き、ひどく荒れた夜、... 2025.05.07巻三十一
巻三十一巻三十一第十六話 見知らぬ島に流れ着いた話 巻31第16話 佐渡国人為風被吹寄不知島語 第十六 今は昔、佐渡国(さどのくに)に住む者が大勢で一艘の船に乗り、出かけたところ、沖合でにわかに南風が吹き出し、矢を射るように船を北の方に吹き流しました。 船の者たちは「もはやこれまで」と観... 2025.04.02巻三十一
巻三十一巻三十一第十五話 犬の妻となった女の話 巻31第15話 北山狗人為妻語 第十五 今は昔、京に住む若い男が北山(きたやま・京都の北方の山々の総称)の辺りに遊びに行ったのですが、いつしか陽がとっぷりと暮れてしまいました。 どことも知れぬ野山の中に迷い込んで、道も分からなくなり、帰... 2025.03.05巻三十一
巻三十一巻三十一第十四話 馬に変えられた修行者の話 巻31第14話 通四国辺地僧行不知所被打成馬語 第十四 今は昔、仏の道を修行する僧が三人、四国の辺地(伊予・讃岐・阿波・土佐)の海辺を廻ることがありました。僧たちはそこを廻っているうち、思いがけず山に入りました。深山に迷い、ただ海辺に... 2024.04.10巻三十一
巻三十一巻三十一第十三話 酒のわき出る隠れ里の話 巻31第13話 通大峰僧行酒泉郷語 第十三 今は昔、仏の道を修行する僧がありました。大峰を通るとき、道を違えて、谷を下っていくと、大きな人郷に出ました。 僧は喜びました。 「人の家に立ち寄って『ここはどこですか』と聞こう」... 2024.04.23巻三十一
巻三十一巻三十一第十二話 人喰いの島に上陸した話 巻31第12話 鎮西人至度羅島語 第十二 今は昔、鎮西(九州)の人が、商いのために多くの人とともに船に乗り、知らぬ国に行って帰ってくる途上、鎮西の未申(南西)の方角のはるかな沖に大きな島を見つけました。人が住んでいる様子でしたから、船の者... 2025.02.02巻三十一
巻三十一巻三十一第十一話 安倍頼時が北の国にわたった話 巻31第11話 陸奥国安倍頼時行胡国空返語 第十一 今は昔、陸奥国(現在の東北)に安倍頼時(あべのよりとき)という武人がいました。 その国の奥に夷(えびす)というものがいて、朝廷に従い奉ろうとしなかったので、「これを討つべし」という勅命が... 2021.12.09巻三十一
巻三十一巻三十一第十話 愛人と寝ているところに妻が押しかけてきた話 巻31第10話 尾張国匂経方妻事夢見語 第十 今は昔、尾張国(愛知県)に匂の経方という者がありました。通称を匂官首といいました。生活に不自由のない者でした。 経方は長年つれそっている本妻のほかに、慕っている女がありました。本妻は、それが... 2025.01.17巻三十一
巻三十一巻三十一第九話 同じ淫夢を見た夫婦の話 巻31第9話 常澄安永於不破関夢見在京妻語 第九 今は昔、常澄安永という人がありました。惟孝親王の下家司(しもけいし、家務を司る下級の者)です。安永は親王の封戸(税)を徴収するため、上野の国(群馬県)に入りました。何か月か経って帰国の際、... 2024.12.23巻三十一
巻三十一巻三十一第八話 炎にすがたを映して死んだ女の話 巻31第8話 移灯火影死女語 第八 今は昔、女御(身分の高い女性)のもとに勤めている若い女房がありました。小中将の君と呼ばれていました。すがたもありさまもとても美麗で、心ばえも悪くありませんでしたから、同僚の女房たちも、みな小中将を親しく... 2024.11.17巻三十一
巻三十一巻三十一第七話 昔の女の霊に会って命を落とした話 巻31第7話 右少弁師家朝臣値女死語 第七 今は昔、右少弁・藤原師家という人がありました。たがいに心を通わせて、行き通う女がありました。 女の心ばえはとてもよく、つらいことも耐え忍び、静かに思いをめぐらす性格でしたから、弁は事にふれ「こ... 2024.10.29巻三十一
巻三十一巻三十一第六話 立て札で人を避けた翁の話 巻31第6話 賀茂祭日一条大路立札見物翁語 第六 今は昔、賀茂の祭の日、一条大路と東洞院大路が交わる場所に、早朝より札が立てられました。札にはこう書かれていました。 「ここは翁が祭を見るところである。立ち入ってはならない」 人はその札... 2024.10.04巻三十一
巻三十一巻三十一第五話 娘を宮様のように飾った身分の賤しい男の話 巻31第5話 大蔵史生宗岡高助傅娘語 第五 今は昔、大蔵省の最下級の史生(書記)に、宗岡高助という者がありました。出かけるときには垂髪(手入れしてない髪)で、栗毛の貧弱な馬を乗り物にしていました。袴・袙・襪(足袋)なども粗末なものでした。... 2024.09.01巻三十一