巻十九第四十話 清水の舞台から飛び降りた男の話

巻十九

巻19第40話 検非違使忠明於清水値敵存命語 第四十

今は昔、忠明という検非違使(警察官)がありました。若いとき、清水寺の橋殿(清水の舞台)で、京童部(きょうわらわべ、暴力団)と諍いになりました。

京童部は刀を抜いて、忠明をとりかこみ殺そうとしました。忠明も刀を抜き、本堂の方向に逃げようとしましたが、本堂の東のはしに京童部が大勢いたので、そちらには逃げられません。(しとね)のもとをとって脇に挟み、前の谷に踊り落ちました。蔀のもとは風に浮き上がり、谷底に降りる鳥のように、ゆっくりと落ちました。忠明は無事に逃げ去ることができたのです。京童部は谷を見おろして、奇異に思いながら、ならんで見ているしかありませんでした。

忠明は京童部が刀を抜いたとき、本堂に向かって「観音(清水寺の本尊)よ、助け給え」と念じました。命が助かったのはひとえにそれが理由だと思いました。

忠明が語ったことを聞き継いで、語り伝えています。

清水寺参詣曼荼羅(戦国時代)

【原文】

巻19第40話 検非違使忠明於清水値敵存命語 第四十
今昔物語集 巻19第40話 検非違使忠明於清水値敵存命語 第四十 今昔、忠明と云ふ検非違使有けり。若男にて有ける時、清水の橋殿にして、京童部と諍をしけり。 京童部、刀を抜て、忠明を立籠めて殺さむとしければ、忠明も刀を抜て、御堂の方様に逃るに、御堂の東の妻に、京童部数(あまた)立て向ければ、其の方へ否(え)逃げずし...

【翻訳】 草野真一

【解説】 草野真一

宇治拾遺物語に同じ話がある。

第95話(巻7・第4話)検非遣使、忠明の事
宇治拾遺物語 第95話(巻7・第4話)検非遣使、忠明の事 検非遣使忠明事 検非遣使、忠明の事 校訂本文 これも今は昔、忠明(ただあきら)といふ検非違使ありけり。 それが若かりける時、清水
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今昔物語集 現代語訳

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