巻二十第四十二話 仙人となって空を飛べるようになった女の話

巻二十(全)

巻20第42話 女人依心風流得感応成仙語 第四十二

今は昔、大和国宇陀郡(奈良県宇陀市)に住む女人がありました。常に心に風流を宿し、清廉で高潔な心を持っていました。七人の子の親となりましたが、貧しく、食物がありませんでした。そのため、子どもたちを養っていくことができませんでした。

この女は毎日沐浴して身を浄め、綴(つづり、粗末な着物)を着て、野に出て菜をつむのを仕事にしていました。家にいるときには、常に家を浄めていました。また、菜を調理して盛りつけ、笑顔で人にふるまっていました。

これを常のこととしているうち、心がまっすぐな女の様子をあわれんで、神仙が彼女に身の回りの世話をさせるようになりました。やがて、自然と神仙の感応を受け、春の野で菜を採って食するうち、それと意識せず仙草を食べ、空を飛ぶことができるようになりました。

心が風流な者は、仏法を修行しなくとも、仙薬を食して、このように仙となります。これを服薬仙と呼びます。心がまっすぐで、仙薬を食べたならば、女であっても仙となり、このように空を飛ぶことさえできるのです。

人は心を風流にして、清廉で高潔に保つべきである、と語り伝えられています。

【原文】

巻20第42話 女人依心風流得感応成仙語 第四十二
今昔物語集 巻20第42話 女人依心風流得感応成仙語 第四十二 今昔、大和国宇陀郡に住む女人有けり。本より心風流にして、永く凶害を離れたり。七人の子を生ぜり。家貧くして、食物無し。然れば、子共を養ふに便無し。

【翻訳】 草野真一

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