巻五第二十九話 大魚の肉を食べた五人の山人の話

巻五(全)

巻5第29話 五人切大魚肉食語 第廿九

今は昔、天竺の海辺の浜に、大魚が寄りました。

そのとき、山人(木樵など)が五人、通りかかりました。五人はこの大魚を見ると、魚の肉を切取って食べました。それを始めとして、世の人がこのことを聞いて集まり、みなが魚の肉を切り取って食べました。

その魚は、釈迦仏の前世です。釈迦仏は大魚となって、山人に我が肉を与えようとしたのです。仏となってから、魚の身を切り取って食べた五人を最初に教化し、道を成じさせました。

この五人は拘隣(くりん)比丘・馬勝(めしょう)比丘・摩訶男(まかなん)・十力迦葉(じゅうりきかしょう)・拘利(くり)太子の前世であると語り伝えられています。

【原文】

巻5第29話 五人切大魚肉食語 第廿九
今昔物語集 巻5第29話 五人切大魚肉食語 第廿九 今昔、天竺の海辺の浜に、大なる魚、寄りたりけり。 其の時に、山人の行き通ずる五人有りけり。此の大魚を見て寄て、魚の肉を切取て、五人して食てけり。其れを始として、世の人、御名聞き継て来て、此の魚の肉を切取て食てけり。

【翻訳】
西村由紀子
【校正】
西村由紀子・草野真一
【協力】
草野真一
【解説】
西村由紀子

成道した釈尊の最初の説法(初転法輪)の由来を述べた話。五人のうち摩訶男は、釈尊の父の浄飯王が子を気づかってつけた王の家来とされている。

初転法輪。カナダ・ケベック州のモニュメント

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