巻九第二十六話 鷹のくちばしを備えて生まれた赤子の話

巻九

巻9第26話 震旦隋代李寛依殺生得現報語 第廿六

今は昔、震旦の隋の上柱国(名誉の称号)に、蒲山(ふざん、山西省の山)の恵公李寛という人がありました。狩猟を好み、鷹狩りを主としていました。鷹数十羽を飼育し、昼夜朝暮に生命を殺していました。

あるとき、この人の妻が懐妊しました。月が満ちて、男子の赤子を生みました。その子の口を見ると、鷹の嘴(くちばし)でした。父はこれを見ると、「片輪者である」として、その子を取り上げず棄ててしまいました。

これはひとえに年来の殺生の咎(罪)により、現報(報い)を受け、鷹の嘴を備えた男子が生まれたのでしょう。そう語り伝えられています。

【原文】

巻9第26話 震旦隋代李寛依殺生得現報語 第廿六
今昔物語集 巻9第26話 震旦隋代李寛依殺生得現報語 第廿六 今昔、震旦の隋の上□□国に、蒲山の恵公李の寛と云ふ人有けり。此の人の性、本より田猟を好て、常に鷹を仕ふを以て業とす。鷹数十を養ふ間、昼夜朝暮に生命を殺すを以て役とす。

【翻訳】 西村由紀子

【校正】 西村由紀子・草野真一

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*「差別的表現」について  

ここでは放送・印刷メディアなどで「差別的表現」とされる語句を原文そのままに使っています。いくつかの翻訳書はこの言葉を削除したり言い換えたりすることで対応していますが、そのかたちはとっていません。

差別的意図はまったくありません。自分はこの言葉で「差別される」側の人間です。そんなもんあるはずがありません。現行の言い回しよりこの言葉のほうが圧倒的にゆたかなのに殺しちゃう、その状況を憂えています。
要望があれば対処したいと思っていますが、こちらが納得できる理由がある場合にかぎります。安易なヒューマニズムにもとづく意見には対応できないとあらかじめ申し上げておきます。
(草野真一)

巻九
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今昔物語集 現代語訳

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