巻十四巻十四第十四話 前生で黒い馬だった人の話 巻14第14話 僧行範持法花経知前世報語 第十四 今は昔、行範という僧がありました。大舎人の頭、藤原周家という人の息子であり、千手院の定基僧都という人の弟子でした。 出家したのち、ねんごろに法華経を読誦しました。一度読誦しただけで、すべ... 2024.09.17巻十四
巻十四巻十四第十三話 前生で経を食い荒らした僧の話 巻14第13話 入道覚念持法花知前生語 第十三 今は昔、入道覚念は明快律師の兄です。道心を発して出家した後は、戒を保ち、法華経を習い、訓読で誦しました。 しかし経の中の三行だけ、読むことができませんでした。そこに至るたび、忘れてしまうの... 2024.08.06巻十四
巻十四巻十四第十二話 経文の二字だけを忘れてしまう話 巻14第12話 醍醐僧恵増持法花知前生語 第十二 今は昔、醍醐寺に僧がありました。名を恵増といいます。法華経を習ってこれを誦し、他の経はまったく読みませんでした。真言も覚えませんでしたし、顕教(教義)も学びませんでした。まして、俗典(仏教... 2024.07.30巻十四
巻十四巻十四第十一話 聖徳太子が講のため夢にあらわれた話 巻14第11話 天王寺為八講於法隆寺写太子疏語 第十一 今は昔、天王寺(四天王寺、大阪府大阪市)の別当(寺の長官、最高位)である定基が僧都になり、御堂(藤原道長)のために法華八講をはじめ、法華経を講じようとしました。このとき、藤原公則とい... 2024.07.18巻十四
巻十四巻十四第十話 殺生する男が天に生まれた話 巻14第10話 陸奥国壬生良門棄悪趣善写法花語 第十 今は昔、陸奥国(東北地方)に壬生の良門という武き者がありました。朝暮に弓箭(弓矢)をもてあそび、人の命をうばい畜生を殺すことを仕事としていました。夏は川で魚を捕り、秋は山に入って鹿を狩... 2024.06.27巻十四
巻十四巻十四第九話 生き埋めになった人が生を得た話 巻14第9話 美作国鉄掘入穴法花力出穴語 第九 今は昔、美作の国英多の郡(岡山県美作市)に、鉄を採る山がありました。安倍天皇の御代に、国司(現在の知事のような役職)が十人の民を召して、かの山に入れて、鉄を掘らせました。民たちが穴に入って鉄... 2024.05.28巻十四
巻十四巻十四第八話 地獄に母をさがした三人の子の話 巻14第8話 越中国書生妻死堕立山地獄語 第八 今は昔、越中の国(富山県)に書生(書記官)がありました。三人の男子があり、毎日国府(国司の役所)に出かけて公事を勤めておりました。 あるとき、書生の妻がとつぜん病にかかり、何日かわずらって... 2024.03.08巻十四
巻十四巻十四第七話 立山の地獄で女に出会った話 巻14第7話 修行僧至越中立山会小女語 第七 今は昔、越中の国(富山県)に、立山という山がありました。昔から「かの山に地獄あり」と言い伝えられています(地獄谷)。 そこは、はるかに広がった高原です。その谷には、百千の湯が、深... 2024.01.21巻十四
巻十四巻十四第六話 経の書写を願った二匹の猿の話 巻14第6話 越後国乙寺僧為猿写法花語 第六 今は昔、越後の国三島の郡(新潟県長岡市)に、乙寺という寺がありました。その寺にひとりの其の寺に一人の僧が住み、昼夜に法華経を読誦することを仕事とし、ほかのことはしませんでした。 あるとき、同... 2023.12.14巻十四
巻十四巻十四第五話 男に抱かれて死んだ女狐の話 巻14第5話 為救野干死写法花人語 第五 今は昔、すがた形の美麗な若者がありました。名前のある者ではありません。侍(貴族の使用人)程度の身分です。 二条大路と朱雀大路のあたりを歩いていて、朱雀門の前をとおるとき、どこから来たのでしょうか... 2023.11.10巻十四
巻十四巻十四第四話 天皇に愛され墓から逃れられなくなった女蛇の話 巻14第4話 女依法花力転蛇身生天語 第四 今は昔、奈良の都のころ、聖武天皇の御代に、都の東に一人の女がありました。姿やありさまが端正でしたので、天皇はこの女を召し、一晩抱きました。かわいいと思ったのか、金千両(両は重さの単位。約38キロ... 2023.10.21巻十四
巻十四巻十四第三話 蛇になった女と焼き殺された男の話(安珍と清姫の物語) 巻14第3話 紀伊国道成寺僧写法花救蛇語 第三 今は昔、熊野に向かう二人の僧がありました。一人は老僧、もう一人は若く、容姿端麗でした。牟婁の郡(和歌山県)である家に泊まりました。 家主は若い寡婦(独身女性... 2020.09.06巻十四
巻十四巻十四第二話 殺し合い続けた鼠と蛇の話 巻14第2話 信濃守為蛇鼠写法花救苦語 第二 今は昔、信濃守の□という人がありました。 任国の信濃(長野県)の任期を終えて、京ににのぼるとき、大きな蛇がお供についてきました。一行がとどまると蛇もとどまり、薮の中におりました。昼は、前にな... 2023.08.26巻十四
巻十四巻十四第一話 誰も知らない蓄えがあったため蛇になった律師の話 巻14第1話 為救無空律師枇杷大臣写法花語 第一 今は昔、比叡の山に無空律師という人がありました。幼くして山に入り、出家して後は、戒を破ることはありませんでした。心は正直であり、道心が深かったので、僧綱の位にまでなりましたが、ついに現世の... 2023.06.29巻十四