巻十四

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巻十四第十一話 聖徳太子が講のため夢にあらわれた話

巻14第11話 天王寺為八講於法隆寺写太子疏語 第十一 今は昔、天王寺(四天王寺、大阪府大阪市)の別当(寺の長官、最高位)である定基が僧都になり、御堂(藤原道長)のために法華八講をはじめ、法華経を講じようとしました。このとき、藤原公則とい...
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巻十四第十話 殺生する男が天に生まれた話

巻14第10話 陸奥国壬生良門棄悪趣善写法花語 第十 今は昔、陸奥国(東北地方)に壬生の良門という武き者がありました。朝暮に弓箭(弓矢)をもてあそび、人の命をうばい畜生を殺すことを仕事としていました。夏は川で魚を捕り、秋は山に入って鹿を狩...
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巻十四第九話 生き埋めになった人が生を得た話

巻14第9話 美作国鉄掘入穴法花力出穴語 第九 今は昔、美作の国英多の郡(岡山県美作市)に、鉄を採る山がありました。安倍天皇の御代に、国司(現在の知事のような役職)が十人の民を召して、かの山に入れて、鉄を掘らせました。民たちが穴に入って鉄...
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巻十四第八話 地獄に母をさがした三人の子の話

巻14第8話 越中国書生妻死堕立山地獄語 第八 今は昔、越中の国(富山県)に書生(書記官)がありました。三人の男子があり、毎日国府(国司の役所)に出かけて公事を勤めておりました。 あるとき、書生の妻がとつぜん病にかかり、何日かわずらって...
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巻十四第七話 立山の地獄で女に出会った話

巻14第7話 修行僧至越中立山会小女語 第七 今は昔、越中の国(富山県)に、立山という山がありました。昔から「かの山に地獄あり」と言い伝えられています(地獄谷)。 そこは、はるかに広がった高原です。その谷には、百千の湯が、深...
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巻十四第六話 経の書写を願った二匹の猿の話

巻14第6話 越後国乙寺僧為猿写法花語 第六 今は昔、越後の国三島の郡(新潟県長岡市)に、乙寺という寺がありました。その寺にひとりの其の寺に一人の僧が住み、昼夜に法華経を読誦することを仕事とし、ほかのことはしませんでした。 あるとき、同...
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巻十四第五話 男に抱かれて死んだ女狐の話

巻14第5話 為救野干死写法花人語 第五 今は昔、すがた形の美麗な若者がありました。名前のある者ではありません。侍(貴族の使用人)程度の身分です。 二条大路と朱雀大路のあたりを歩いていて、朱雀門の前をとおるとき、どこから来たのでしょうか...
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巻十四第四話 天皇に愛され墓から逃れられなくなった女蛇の話

巻14第4話 女依法花力転蛇身生天語 第四 今は昔、奈良の都のころ、聖武天皇の御代に、都の東に一人の女がありました。姿やありさまが端正でしたので、天皇はこの女を召し、一晩抱きました。かわいいと思ったのか、金千両(両は重さの単位。約38キロ...
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巻十四第三話 蛇になった女と焼き殺された男の話(安珍と清姫の物語)

巻14第3話 紀伊国道成寺僧写法花救蛇語 第三 今は昔、熊野に向かう二人の僧がありました。一人は老僧、もう一人は若く、容姿端麗でした。牟婁の郡(和歌山県)である家に泊まりました。 家主は若い寡婦(独身女性...
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巻十四第二話 殺し合い続けた鼠と蛇の話

巻14第2話 信濃守為蛇鼠写法花救苦語 第二 今は昔、信濃守の□という人がありました。 任国の信濃(長野県)の任期を終えて、京ににのぼるとき、大きな蛇がお供についてきました。一行がとどまると蛇もとどまり、薮の中におりました。昼は、前にな...
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巻十四第一話 誰も知らない蓄えがあったため蛇になった律師の話

巻14第1話 為救無空律師枇杷大臣写法花語 第一 今は昔、比叡の山に無空律師という人がありました。幼くして山に入り、出家して後は、戒を破ることはありませんでした。心は正直であり、道心が深かったので、僧綱の位にまでなりましたが、ついに現世の...
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