巻十七第二十一話 六波羅蜜寺の地蔵像の由来

巻十七

巻17第21話 但馬前司□□国挙依地蔵助得活語 第廿一

今は昔、但馬(兵庫県)の前司(ぜんじ、前任の国司)国挙(くにたか)という人がありました。長く公務をつとめ、私も充実させているうち、身に病を受け、死ぬことになりました。すぐに閻魔の庁に召されました。

国挙が見回すと、多くの罪人の中に、小僧がひとりありました。美しいすがたをして、手に巻物を持ち、東西に走りまわり、訴える様子でした。
そばにいる人が言いました。
「小僧は、地蔵菩薩です」
国挙はこれを聞くと、この小僧に向かい、地にひざまずき、涙を流して言いました。
「私は思いもかけずここに召されました。願わくは、地蔵大悲の誓いをもって、私を助けてください。罪を許してもらえるようはからってください」

小僧はこれには答えませんでした。弾指(たんし、つまはじき。指をはじく仏教の所作)して言いました。
「人の世の栄華は、夢幻のようなものである。罪業の因縁は、あたかも万劫を経た巌(岩)のようなものだ。まして、おまえは女にふけり、多くの罪業を得ている。今、召されたのはその罪ゆえだ。どうして私がおまえを助けることができるだろう。また、おまえは生前、私をまったく敬わなかった。おまえを助けることはできない」
小僧は背を向けて立っていました。

国挙は悔い悲しみ、小僧に言いました。
「私をあわれみ、助けてください。生き返ることができたならば、財を棄てて三宝(仏法僧)に奉仕し、地蔵菩薩に帰依します」
小僧はこれを聞くと、こちらに向き直りました。
「おまえが言うことが本当かどうか試してやろう。冥官に乞い、おまえを元の世界に帰してやる」
小僧は冥官の所に行き、訴え乞い、国挙を放免しました。国挙は半日後、生き返りました。

国挙はこのことを人に語らず、髪とひげを剃り、出家入道しました。大仏師の定朝に依頼し、等身大で金色の地蔵菩薩像をつくりました。さらに、色紙に法華経を書写し、六波羅蜜寺で法会をおこない、供養しました。講師は大原(京都市左京区)の浄源供奉(ぐぶ)という人でした。法会に来た道俗男女はみな涙を流し、地蔵菩薩の霊験を信じました。

「その地蔵菩薩は六波羅寺に今も安置されている」と語り伝えられています。

定朝作 地蔵菩薩立像 六波羅蜜寺

六波羅蜜寺(京都市東山区)

【原文】

巻17第21話 但馬前司□□国挙依地蔵助得活語 第廿一
今昔物語集 巻17第21話 但馬前司□□国挙依地蔵助得活語 第廿一 今昔、但馬前司□□国挙と云ふ人有けり。年来、公けに仕へ、私を顧て有る間、身に病を受て、俄に死ぬ。即ち、閻魔の庁に召さぬ。

【翻訳】 草野真一

 

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今昔物語集 現代語訳

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