巻十一第十七話 天武天皇が薬師寺を築いた話(薬師寺の由来)

巻十一

巻11第17話 天智天皇造薬師寺語 第十七

今は昔、天武天皇が位につきました。つづいて、持統天皇という女帝が即位しました。

高市の郡(奈良県橿原市)に寺をつくり、薬師仏を安置しました。奈良の都の時代に、元明天皇という女帝が、西京の六条、今の薬師寺の地(奈良県奈良市西ノ京町)に移しました。
その天皇の師である僧が、禅定に入って龍宮に行き、その龍宮のつくりを見て、天皇に申しあげて建てたものです。今も仏法がさかんにおこなわれています。この寺の本尊である薬師仏に祈り請うと、利益を蒙らないということがありません。ひたすらに崇め奉るべき仏でいらっしゃいます。

寺内には、たとえ身分の高い僧であっても、入ることはできません。ただ、堂童子という俗人だけが、仏に供物や灯明をたてまつっています。やんごとないことだと語り伝えられています。

薬師寺 東塔(手前、国宝)

【原文】

巻11第17話 天智天皇造薬師寺語 第十七
今昔物語集 巻11第17話 天智天皇造薬師寺語 第十七 今天皇位に即給ひにけり。其の次にぞ、女帝持統天皇は位に即給ける。 高市の郡□□と云ふ所に寺を起て、此の薬師の像を安置し給ひつ。其の後、奈良の都の時、元明天皇と申す女帝、西京の六条□坊、今の薬師寺の所には移し造給へる也。其の天皇の御師と云ふ僧有て、定に入て龍宮...

【翻訳】 柴崎陽子

【校正】 柴崎陽子・草野真一

【解説】 柴崎陽子

現在も奈良市に存する薬師寺は世界文化遺産に指定されています。天武天皇が后であったのちの持統天皇のために創建したとされ、したがってこの話の「天智天皇造薬師寺語」というタイトルは天武天皇の誤りだろうと考えられています。

平城京に移されたのはこの話にあるとおりです。ただし、「寺内に僧は入れない」という風習はあったとしてもこの時代だけのようで、本尊の薬師如来像(国宝)をふくめ、現在は誰でも拝観できるようになっています。

この話をふくむ寺院の由来を語る条は失われている部分が多く、この話も長い話の一部だと考えられています。

平城京薬師寺伽藍の模型(奈良市役所)

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【協力】ゆかり・草野真一

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