巻二第二十一話 智恵の眼を得た天人の話

巻二(全)

巻2第21話 天人聞法得法眼浄語 第(廿一)

今は昔、仏が祇園精舎にいらっしゃるとき、天人が一人、下り来たりました。

仏はこの天人を見て、四諦の法を説き聞かせました。天人はこの法を聞くと、たちまちに法眼浄(真理を見通す智恵の眼)を得ました。

阿難(アーナンダ、釈尊の身の回りの世話をした弟子)が問いました。
「どうしてこの天人に四諦の法を説き聞かせ、法眼浄を得させたのですか」

仏は答えました。
「この天人は、須達(スダッタ)長者がこの精舎をつくった折、庭を払い、道を掃除した奴婢だった。その善根によって、奴婢は次の世で忉利天に生まれた。この天人は、その奴婢である。それゆえ下り来り、私に出会い、法を聞き、法眼浄を得たのだ」

自分の心からではなく、人の言いつけによって、寺の庭を掃除した功徳でもこれほどのものです。自分から心をつくして寺の庭を掃除する人の功徳はどれほどのものでしょうか。思いやるべしと語り伝えられています。

巻二第十五話 須達の美しい娘が十の卵を産んだ話
巻2第15話 須達長者蘇曼女十卵語 第十五今は昔、天竺の舎衛城(コーサラ国の首都、祇園精舎がある)の中に(インドでは城の中に街がある)、一人の長者がありました。須達(しゅだつ、スダッタ。祇園精舎をつくった人)といいます。彼のたくさんの子...
巻一第三十一話 祇園精舎をつくった話
巻1第31話 須達長者造祇薗精舎語 第卅一今は昔、天竺の舎衛国(しゃえこく、コーサラ国)に一人の長者(富裕な人)がおりました。名を須達(すだつ、スダッタ)といいます。彼は一生の間に、七度富貴を体験し、七度貧窮に苦しみました。七度目の貧は、...

【原文】

巻2第21話 天人聞法得法眼浄語 第(廿一)
今昔物語集 巻2第21話 天人聞法得法眼浄語 第(廿一) 今昔、仏、祇洹精舎に在ける時に、一人の天人、来下たり。 仏、此の天人を見給て、四諦の法を説て聞かしめ給ふ。天人、此の法を聞くに依て、忽に法眼浄を得たり。

【翻訳】 草野真一

コメント

タイトルとURLをコピーしました