巻2第22話 常具天蓋人語 第(廿二)
今は昔、天竺に一人の人がありました。その人の頭上には、常に天蓋(傘)がありました。人々はこれを奇異に思い、仏にたずねました。
この人はどんな行いをしたために、常に頭上に天蓋があるのですか」
仏は説きました。
「この人は、前生に貧しい家に生まれ、下賤の人であった。世を過ごし食べていくために路辺に住していたとき、雨が降ることがあった。ずぶ濡れになって通っていく人がある。呼び止めて、古く破れた笠をあげた。そのことで、その人は濡れずに済んだ。今生で常にに天蓋を備える果報を得たのは、その功徳である」
善き笠をもって、僧に供養する功徳、思いやるべしと語り伝えられています。
【原文】
巻2第22話 常具天蓋人語 第(廿二)
今昔物語集 巻2第22話 常具天蓋人語 第(廿二) 今昔、天竺に一人の人有り。其人の上に、常に天蓋有り。諸の人、此れを見て、奇異の思を成して、而も仏に問ひ奉て云く、「此の人、何なる業有てか、常に其の上に天蓋有るぞ」と。
【翻訳】 草野真一
【解説】 草野真一
インドは雨期と乾期がある国で、乾期(年の半分)の降水量はゼロに近い。
ならば傘はいらないと考えるのは日本人の考え方で、乾期のほうが傘を持ってる人が多いかもしれない。
かの国はとても日差しが強いので、それを避けるため、日傘として傘が必要なのだ。
インドでは伝統的に黒い肌を忌む傾向があるが、「色黒=傘が買えないほど貧しい」という考え方と無縁ではないだろう。
僧侶が座るスペースの上に天蓋が設けられているのは、傘が変化したもの。身分が高い人は自分で傘を持つ必要はなかった。
花魁道中の絵を見ると晴れてるのに傘さして歩いてるやつがいる。高貴な人に傘持つ人が従うのはインドから来た慣習だと思うのだが。詳しい人教えてください。
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