巻六第二十三話 薬師仏が妊娠に苦しむ女を救った話

巻六(全)

巻6第23話 震旦淄州女依薬師仏助得平産語 第廿三

今は昔、震旦の淄州(山東省淄博市)に一人の女がありました。懐妊してからすでに十二か月が経っていましたが、いまだ産まれませんでした。身体は腫れあがって痛み、かぎりなく苦しみました。声を出して泣き叫ばずにはいられませんでした。

そのとき、邁公(まいこう)という僧が女に教えました。
「この苦を遁れたいと思うなら、薬師仏の御名を唱へ奉るとよい」
女は僧の教えに随い、心をつくして薬師仏の御名を唱えました。

その夜の夢に、仏が自ら苦を救ってくださるさまを見ました。夢から覚めると、女はいよいよ信を発して薬師仏の御名を唱え、怠りませんでした。唱えるにしたがって、苦しみは徐々に静まり、やがて男子が生まれました。

人々は「希有なことだ」と言いました。まさに仏の御利益です。仏は御誓い(薬師の十二誓願)を違えず、貴いものである。そう語り伝えられています。

妊娠検査法が書かれた古代エジプトのパピルス (BC1500-1300)

古代エジプトの妊娠検査法、3500年前のパピルスに記載
3500年前の古代エジプトの女性も、現代の女性と同じように尿によって妊娠の有無を判定していた可能性がある。研究者らによる同時代のパピルスの分析から明らかになった。

【原文】

巻6第23話 震旦淄州女依薬師仏助得平産語 第廿三
今昔物語集 巻6第23話 震旦淄州女依薬師仏助得平産語 第廿三 今昔、震旦の淄州に一人の女有り。懐妊して後、十二月に産する事を得ずして、身体瘇(は)れて、痛み悩む事限無し。然れば、音を挙て泣叫ぶ。

【翻訳】 西村由紀子

【校正】 西村由紀子・草野真一

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【協力】ゆかり・草野真一

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