巻六第八話 金剛智三蔵が金剛界曼陀羅を震旦に伝えた話

巻六(全)

巻6第8話 金剛智三蔵金剛界曼陀羅渡震旦語 第八

今は昔、大日如来は一切衆生(すべての生物)を救い護るために、金剛界の曼陀羅の大法を説き、金剛薩埵に伝えました。金剛薩埵はこれを、数百年ののち、龍猛菩薩に伝えました。龍猛菩薩はやはり数百年後、龍智菩薩に伝えました。龍智は、瓶の水を器に移すように、これを金剛智に伝えました。

大日如来(平安時代、東京国立博物館)

大日如来(平安時代、東京国立博物館)

金剛智は、南天竺の摩頼耶国(マラヤ国、位置は定かでない)の人でした。慈悲深く、縁があれば遊行して、それぞれの場所で衆生を利益しました。国中の者が帰依していました。「震旦では仏法がさかんであり、大教を尊崇する」と聞き、船に乗って海を渡り、開元八年(西暦719年)、震旦に入りました。

金剛智(奈良国立博物館)

ときの国王、唐の玄宗皇帝は、金剛智に深く帰依し、広く教法を弘め、曼陀羅を建てました。その霊験はたいへん深いものでした。
(下文欠)

金剛界曼荼羅

【原文】

巻6第8話 金剛智三蔵金剛界曼陀羅渡震旦語 第八
今昔物語集 巻6第8話 金剛智三蔵金剛界曼陀羅渡震旦語 第八 今昔、大日如来、一切衆生を利益し給はむが為に、金剛界の曼陀羅の大法を説給て、金剛薩埵に授け給ふ。金剛薩埵、此れを受け、数百歳の後、龍猛菩薩

【翻訳】 西村由紀子

【校正】 西村由紀子・草野真一

【協力】 草野真一

【解説】 西村由紀子

金剛界曼陀羅は胎蔵界曼荼羅と対をなし、両界曼荼羅として密教を伝えるとされる。

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