巻十七第五十話 祈ればかなう元興寺の夜叉像の話

巻十七(全)

巻17第50話 元興寺中門夜叉施霊験語 第五十

今は昔、元興寺の中門に二天(持国天と増長天)がいらっしゃました。その使者として夜叉がありました。その夜叉はかぎりない霊験を施しました。それゆえ、その寺の僧はもいろん、里の男女、この夜叉に詣でて、あるいは法施を奉り、あるいは供具を備えて、心に願うことを祈り請いました。ひとつとして叶わないことはありませんでした。

(下文欠、巻十七 了)

夜叉神立像(平安時代 京都市六波羅蜜寺)

【原文】

巻17第50話 元興寺中門夜叉施霊験語 第五十
今昔物語集 巻17第50話 元興寺中門夜叉施霊験語 第五十 底本、標題のみで本文を欠く。底本付録「本文補遺」の鈴鹿本により補う。 今昔、元興寺の中門に二天在ます。其の使者として夜叉有り。其の夜叉、霊験を施す事限無し。然れば、其の寺の僧より始て、里の男女、此の夜叉の許に詣でて、或は法施を奉り、或は供具を備て、心に願...

【翻訳】 草野真一

【解説】 草野真一

元興寺は興福寺や東大寺と同じかそれ以上の大きさを持つ大寺であったが、現在はその勢力を失っており、奈良県明日香村と奈良市に法統を受け継ぐ寺があるにすぎない。
中門とは南大門と金堂の間にある門を指す。

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