巻十九

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巻十九第三十二話 平維叙、神に恩返しをされる

今は昔、陸奥守(むつのかみ・現在の東北地方の国司)平維叙(たいらのこれのぶ)という者がいました。貞盛朝臣(さだもりのあそん・平将門を誅殺した勲功者)の子であります。任国にはじめて下り、神拝(じんぱい・新任国司の行事)ということをしようと、...
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巻十九第二十七話 児よりも母を助けた話

巻19第27話 住河辺僧値洪水棄子助母語 第廿七 今は昔、高潮が上がって、淀川の水かさが増し、河辺の多くの人の家が流れました時に、年のほど五、六歳くらいで、色白く見た目も端正な、気配りもしっかりできる男の子をもって、片時も身も離さず可愛が...
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巻十九第二十六話 下野公助、父に打たれても逃げなかった話

巻19第26話 下野公助為父敦行被打不逃語 第廿六 今は昔、右近の馬場で手番(てつがい・射手を左右に分けて二人一組で勝負を競う。五月の節句の宮中行事)が行われたとき、中将・大将たちが馬場で着座していました。その日、下野公助(しもつけの...
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巻十九第二十四話 安倍清明、泰山府君の祭祀を行う

巻19第24話 代師入太山府君祭都状僧語 今は昔、□□という人がいました。 □□の僧であります。 なかなかの名僧なので、皇室・一般から共に尊ばれていましたが、重い病気にかかり、悩み患っているうち、日に日に病が重篤になったので、師のもと...
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巻十九第十五話 公任の大納言、出家して長谷に住む(欠話)

巻19第15話 公任大納言出家籠居長谷語 第十五 【解説】 柳瀬照美 本話は表題だけ留める本文欠話。当初よりの欠脱かと思われる。 藤原公任(ふじわらのきんとう)は、漢詩・管弦・有職に長じた歌人。藤原道長に対して才能を誇示した『三舟の...
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巻十九第十四話 人殺しの悪人が僧になって旅する話(マンガリンクあり)

巻19第14話 讃岐国多度郡五位聞法即出家語 第十四 今は昔、讃岐国多度の郡(香川県善通寺市)に、源大夫という人がありました。名はわかりません。とても猛々しい人で、殺生を生業としていました。日夜朝暮に山野に行っては鹿鳥を狩り、川海に行って...
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巻十九第八話 キジになって鷹と犬に追われた男の話

巻19第8話 西京鷹仕者見夢出家語 第八 今は昔、西京に鷹狩りを仕事にしている者がありました。息子が何人もいて、その子たちにも鷹狩りを仕事にするように伝え教えていました。 常に心にかけ、夜となく昼となく好んだことでしたから、寝ても覚めて...
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巻十九第七話 母の生まれ変わりの鹿を射殺してしまった男の話

巻19第7話 丹後守保昌朝臣郎等射母成鹿出家語 第七 今は昔、藤原の保昌という人がありました。武家ではありませんでしたが、勇猛な心を持ち、弓箭の道に通じていました。丹後(京都府宮津市など)の守として任についている間、朝暮に郎等(家来)や眷...
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巻十九第六話 死んだ鴨の雄を慕って追ってきた雌鴨の話

巻19第6話 鴨雌見雄死所来出家語 第六 今は昔、京に一人の生侍(身分の低い若い侍)がありました。いつごろのことかはわかりません。家はとても貧しく、生きていくことすら苦しいありさまでした。 あるとき、妻がお産して、肉食をして体力をつけるこ...
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巻十九第五話 すべてを失った姫君の話(芥川龍之介『六の宮の姫君』元話)

巻19第5話 六宮姫君夫出家語 第五 今は昔、六の宮というところに兵部の大輔(ひょうぶのたゆう、軍の下級役人)がありました。年老いていたので、古い習慣にならって人と交わることがなく、父が遺した宮の、すっかり木が伸びきって荒れ果ててしまった東...
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巻十九第四話 源満仲の出家(その2)

巻19第4話 摂津守源満仲出家語 第四 (その1より続く) その後、郎等たちは各自、弓矢を背負い、甲冑をつけ、四、五百人ばかりの者が館の周りを三重四重に取り囲んで、一晩じゅう篝火をたき、大勢の者を出して巡察させなどして、油断なく警護しまし...
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巻十九第四話 源満仲の出家(その1)

巻19第4話 摂津守源満仲出家語 第四 今は昔、円融天皇(えんゆうてんのう・第64代天皇、村上天皇の皇子)の御代に、左馬頭(さまのかみ・官馬に関する一切のことを司る馬寮の長官)源満仲(みなもとのみつなか)という人がいました。筑前守(ちくぜ...
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巻十九第三話 陰陽師の賀茂忠行の子・慶滋保胤の道心(その2)

巻19第3話 内記慶滋ノ保胤出家語 第三 (その1より続く) その後、東山の如意(にょい・如意輪寺)という所に住んでいましたが、六条院(ろくじょうのいん)から「すぐに参上せよ」と、お召しがあったので、知人の馬を借りて、それに乗って朝早く...
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巻十九第三話 陰陽師の賀茂忠行の子・慶滋保胤の道心(その1)

巻19第3話 内記慶滋ノ保胤出家語 第三 今は昔、□□天皇の御代に、内記(ないき・朝廷の書記)慶滋保胤(よししげのやすたね)という者がいました。 実際は、陰陽師・賀茂忠行(かものただゆき)の子です。 けれども、□□という博士の養子とな...
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巻十九第二話 大江定基、出家して寂照となる(その2)

巻19第2話 参河守大江定基出家語 第二  (その1より続く) そののち、寂照(じゃくしょう)は京の町で喜捨を請うて歩いていましたが、とある家に至ると、彼を家へ呼び上げて畳に坐らせ、ご馳走を供えて食べさせようとします。そのとき、簾を巻き...
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